昨今、多くの企業から『心理的安全性』というキーワードを耳にします。
そして、その実現に向けて様々な取り組みを行っているところも多いのではないでしょうか。
安心して意見が言える職場、いつでも挑戦できる環境、失敗を責めない風土。
これらは今、多くの組織で一般的な価値観となりつつあります。
ただ、現場では、誰かを厳しく注意をしないといけないシチュエーションのとき・・・
「本当は、もっと厳しく言わんといけんけど、
心理的安全性を壊してしまうんじゃないか?強く言うと、ハラスメントと受け取られるんちゃうか?」
と、注意・指導に二の足を踏んでしまい、
言うべきことが言えないまま、時間だけが過ぎていく・・・
そう感じながらも、一歩を踏み出せずにいる管理職も少なくないのではないでしょうか。
では、「心理的安全性」と「厳しい指導」は、本当に相反するものなのでしょうか。
今回のコラムでは、このテーマについて考えたいと思います。
心理的安全性は「優しさ」ではない
まず整理しておきたいのは、心理的安全性に対する誤解です。
心理的安全性とは、耳の痛いことを指摘されないということでも、
厳しいことを言われないことでもありません。
本来の意味は、
たとえ厳しい指摘をし合ったとしても、それが共通の目的のための
建設的な対立であると、「互いに信頼できている状態」を指します。
(人格否定や恫喝などは論外です)
間違った意見を言っても何も言われない職場、
ミスをしてもだれからも指摘されない職場、
良い案があるけど衝突を避けて何も言わない職場は、
心理的安全性が高いのではなく、単に「関わりが薄い職場」だけと言えるかもしれません。
現実、厳しく指導しなければならない場面はある
現場には、どうしても踏み込まなければならない場面があります。
・安全規則を軽視する行動
・顧客や社内の約束やルールを守らない行動
・同じミスを繰り返し行動が変わらない行動
などなど。
こうしたケースで、
「心理的安全性を守るために何も言わない」という選択は、
本人だけでなく、周囲や組織全体に対して不誠実になりかねません。
ここで問われているのは、厳しいのか厳しくないのか、ではなく、
その指導やしかる行為が、心理的安全性を壊すものなのかどうか、
という点です。
心理的安全性を「壊す厳しさ」と、「守る厳しさ」
心理的安全性を壊してしまう厳しさには、共通点があります。
相手を威圧するために感情をぶちまけること。
人格を否定すること。
逃げ場がなくなるまで論理的に詰めること。
これは指導ではなく、相手への攻撃です。
この「攻撃」によって、心理的安全性が壊されていきます。
そして、この攻撃の先に出てくる言葉は、
たいていの場合は「すみません」や「ごめんなさい」という言葉でしょう。
しかしその言葉の先に、
健全な行動変化や成長が生まれないことは、
多くの方が経験的に分かっているはずです。
一方で、
心理的安全性を守りながら行われる厳しさも、確かに存在します。
心理的安全性と厳しい指導を両立させる、3つの手順
私たちが現場でお勧めしているのは、
次の3つをこの順番で伝えることです。
①事実 → ②自分の感情 → ③支援(問い)
この順番こそが、厳しさを「攻撃」に変えず、
心理的安全性を保つための手順です。
① まず「事実」を伝える
最初に伝えるのは、誰が見ても同じとらえ方ができる事実。
提出資料の期限を守らないメンバーがいたとしたら、
「なんで納期通り出さんのや、やる気ないんか!ちゃんと提出せえよ!」ではなく、
事実は「この1週間で、提出期限を2回過ぎている」ですし、
ルールを無視して作業をする部下がいたとしたら、
「いい加減にせいよ!こんなルールも守れんのんか!」ではなく、
事実は「決めたルールを守らず、自己判断で作業を進めている」です。
事実から入ることで、
指導の矢印は「人」ではなく行動に向きます。
② 次に「自分の感情」を伝える
次に伝えるのは、正論でも説教でもありません。
その事実を見て、自分がどう感じたかです。
「私は不安を感じているよ」
「このままだと、私は君に任せ続けるのが難しいと感じているよ」
「私は正直、少し残念に思っているよ」
というように、
「私」を主語にして「私」の感情を伝えることです。
感情”で”伝えるのではなく、感情”を”伝えます。
その人の能力自体や価値観を「攻撃」するのはなく、
相手を責めずに、自分の感情を客観的に伝えます。
③ 最後は「支援」。
答えを与えるのではなく、問いかけ一緒に考える姿勢を示します。
「この状況はどうすれば立て直せるかな?」
「次は何を変えれば、同じことを防げそうかな?」
「私から、どんなサポートがあればやりやすくなるかな?」
と問いを投げ、一緒に考える姿勢を示すことです。
これによって、厳しさによる「支配」ではなく、
自律を促す関わりに変わります。
「心理的安全性」と「厳しい指導」は、両輪で回る。
私たちが「指導」や「しかる」という行為の先に求めているのは、
相手の謝罪の言葉でも、萎縮した姿でもありません。
相手が次に同じ場面に立ったとき、
自ら考え、行動を変え、
これまでとは違う成果を出すこと。
その行動変容を支えるためにこそ、心理的安全性が必要であり、
同時に、管理者が逃げない厳しさが必要なのです。
心理的安全性と厳しい指導・しかる事は、対立概念ではありません。
正しく設計された厳しさ・しかる事は、むしろ心理的安全性を強くするものだと、私は考えます。
この両立こそが、これからの管理職に求められている姿なのではないでしょうか。
最後に
あなたの会社では、
管理職が「言うべきこと」を言えていますか?
指導によって部下やチームメンバーが「萎縮」や「謝罪」ではなく、
行動変容につながる設計になっているでしょうか。
もし少しでも引っかかる点があれば、
それはマネジメントを見直すサインかもしれません。
CAN be CAREERは、広島を拠点に、心理的安全性と厳しさが両立する人材育成・組織づくりを、
現場に寄り添いながらご支援しています。
貴社のなりたい姿に寄り添い、最適なプランをご提案いたします。
(こちらの動画もご参考ください)
https://www.youtube.com/embed/63erjTCzRww