~『善意のハラスメント』を防ぐ組織づくりとは?~
今回は、職場において意外と見落とされがちなテーマ「善意のハラスメント」についてお届けします。
それ、本当に相手のためになっていますか?
「君のためを思って言っとんよ!」
「厳しくしとんのは君に期待しているけぇなんよ、何でわからんの!」
いずれも、部下や後輩を思っての言葉です。
けれど、こうした「善意の言葉」が、時として相手を傷つけ、萎縮させ、職場に不信感を生むことがあります。
そのつもりがなかったからこそ、「善意のハラスメント」は防ぎにくく、根が深いのです。
善意のハラスメントが起きる背景とは?
私たちが関わる中小企業では、こんな声をよく伺います。
- 「部下の成長を思って、あえて厳しく接っしとったんじゃけど…」
- 「過去の自分を思い出して、自分が若手の時の上司と同じように指導しよったんじゃけど…」
- 「もっと早く一人前になってほしくて、意図的にプレッシャーかけとったんじゃけどね…」
それらは、決して間違った動機ではありません。ただ、相手がどう感じるかという視点が抜けてしまうと、善意は圧力に変わります。
善意のハラスメントが生まれる職場の特徴は、大きく3つに分けられます。
- 「成果主義」と「情熱主義」が混在している → 熱い想いが、時に過剰な指導に。
- 上司と部下の関係が教育者と生徒のようになっている → 上司の価値観を押し付ける構図に。
- 感情のコントロールより根性論が重視される文化 → 「とにかく頑張れ!」が過度なプレッシャーに。
ケースで見る「善意のハラスメント」
研修で扱った事例をご紹介します。
「期待してるからこそ、厳しく言ってるんよ」
ある中堅社員が、後輩のプレゼン資料を見てこう言いました。
「この資料じゃ全然ダメだわ。前にも同じとこ注意したじゃろう!?聞いとらんかったん?どこが悪いか自分でもう一回考えて、直してきんさい。」
確かにプレゼンには改善の余地がありました。しかし、こうした伝え方をされたことで、後輩はその場で言葉を失い、その後しばらく自信をなくしてしまいました。指導した本人は「期待しているからこそ、敢えてああいう言い方をした」と語っていましたが、受け手にとっては、自分の努力ごと否定されたように感じたのです。
自分の「正義」が、相手を苦しめていないか?
このような善意のハラスメントを防ぐカギは、「感情の自己認識」と「関係性の土壌づくり」です。
研修では、以下のようなテーマを扱い、管理職や中堅社員の気づきを促します。
- 「怒り」と「指導」の違いを理解する
- 自分の中のイライラの正体に気づく
- 相手の成長を願うなら、相手の安心感が最優先
- 「I(アイ)メッセージ」で、自分の気持ちとして伝える技術を学ぶ
たとえば
「この資料じゃダメだ」ではなく、「もう少し構成を整理したら、もっと良くなると俺は思ったんだけど、どう思う?」と投げかけるだけで、まったく違う受け止められ方になります。
指導とは、「押しつけ」ではなく「引き出し」
本当に部下のことを思うなら、「できるようになるまで寄り添う」ことが大切です。
私たちが提供する研修では、次のような力を育むサポートをしています。
- 管理職には、「感情コントロール」と「前向きな指導力」
- 中堅社員には、「後輩に安心感を与えるコミュニケーション」
- 若手社員には、「受け止め方」と「信頼関係の築き方」
これらを通して、「成長の土壌」を整えていく。それが、善意のハラスメントを未然に防ぐ組織への第一歩になります。
最後に:会社全体で想いの届け方を見直そう
「君のためを思って」は、強い想いの表れです。でも、伝え方を誤れば、それは刃にもなり得ます。
私たちは、「共感から始まる設計」を大切に、一人ひとりの「善意」が、ちゃんと前向きな影響として届くよう、企業と共に育成の場をつくっています。
善意をうまく循環させられる組織へ。
もし「うちの職場、もしかして…」と思ったら、ぜひ一度ご相談ください。
現場の空気に寄り添った研修をご提案いたします。