「きく力」が組織に効く理由。聞く・聴く・訊くの違いを知っていますか?

今回のコラムは、「きく」について考えてみたいと思います。

私たちは一日に何回、「きく」という行為をしているでしょうか。
仕事では、部下の報告、上司の指示、取引先の話……。
プライベートでは、家族との会話、友人との雑談、街の雑踏から聞こえる音楽……。

実は、この「きく」には
「聞く」「聴く」「訊く」の3つがあることはご存じでしょうか。
この違いを意識できているかどうかが、コミュニケーションの深さを決め、
ひいては組織の信頼関係と成果を左右すると言っても過言ではありません。

「聞く」「聴く」「訊く」の違いとは

3つの漢字は同じ「きく」ですが、意味が異なります。
それぞれの意味を整理すると、こんな感じです。

聞く:音や言葉を耳に入れる 情報を受け取る
聴く:心を傾けて、相手の想いまで受け取る。相手の理屈で相手を理解する
訊く:相手に問いかけ、考えを引き出す。相手理解を深めるための対話

組織運営、というよりも、むしろ人と人との関係構築において重要なのは、
この3つの「きく」のうち、とても重要なのが「聴く」と「訊く」の2つです。
相手の話をただ「聞く」だけでは、情報は伝わっても信頼は生まれません。
「聴く」ことで相手の気持ちや背景を受け止め、
「訊く」ことで相手の考えや意志を引き出す。
この2つが噛み合うことで、初めて関係性は深まり、
互いの理解と成長が生まれていきます。

ただ、現実は「聞く」だけで終わってしまうことが少なくありません。
たとえば、上司は部下の報告を「聞いている」が、部下は「聴いてもらえていない」と感じている。
などは、よくあるすれ違いかと思います。
こうしたすれ違いが続くと、コミュニケーションは「単なる情報の交換」にとどまり、
信頼関係の構築には至りません。

聴いて、受け止め、訊いて、引き出す。
このシンプルな循環がとても重要なのです。

「聴く」とは、相手の世界に耳を傾けること

ここでいう「聴く」とは、いわゆる傾聴のことです。
詳しいやり方はここでは省きますが(詳細はぜひCAN be CAREERの研修にて 笑)、
超シンプルに言えば、
「頭を空っぽにして、相手の話を真剣に聴く」ということ。

自分の意見や判断をいったん脇に置き、
「理解するより、まず受け止める」ことに集中する。
これが、相手の心を開く最初の一歩です。

上司が部下の話を最後まで聴く、同僚同士で言葉を遮らずに最後まで話を聴く。
たったそれだけで、相手との空気感が変わることを実感できるかと思います。

「訊く」とは、相手の可能性を引き出すこと

一方の「訊く」は、コーチングの領域です。
こちらも詳しい説明は省きますが、こちらもシンプルに言えば、
「相手にいい質問をする」ということ。

相手の中にある答えや考え方を引き出すために、
「どうしてそう思ったの?」「もし理想の状態に近づけるなら、何から始めたい?」など、
相手の考えを整理し、前に進ませるような質問を投げかけます。

そして実は、うまく「訊く」ための土台は、「聴く」ことだという事を忘れてはいけません。
なぜなら、傾聴によって相手が「この人はきちんと自分の話をきいてくれるな」と感じてはじめて、
「訊く」ときの質問に対してより本音や本質に近い回答を返すようになるからです。

また、そもそも信頼関係が築けていない相手から
『〇〇をもっとうまくするにはどうすれば良いと思う?』と、突然たずねられても
『やかましいわっ!何で答えなあかんのじゃ!』と、拒絶されてしまっては元もこもありませんので、
「聴く」姿勢はとても大切なのです。

相手が本当に話したいこと、言葉にできていない想いを感じ取りれるかどうか。
その解像度が高ければ高いほど、良い質問は生まれます
つまり、「聴く力」が「訊く力」を支えていると言っても過言ではありません。

質問の引き出しも重要

コーチングでは「質問の引き出し」を増やすことも大切です。
たとえば、目標達成までのプロセスを整理するGROWモデル(Goal・Reality・Options・Will)などは、
現場の1on1や面談でも活用しやすいフレームワークです。

  • Goal(目標):どんな状態を目指したい?
  • Reality(現状):今はどんな状況?
  • Options(選択肢):他にどんな方法がありそう?
  • Will(意志):まず何から始めてみたい?

さらに、もっとシンプルに使える“数値化の質問”も効果的です。

「今の状態は100点満点でいうと何点くらい?」
「なるほど、70点くらいなんだね。何ができているから70点なの?」
「じゃあ、あと10点だけ上げようと思ったら、どんな取組ができそう?」

このような問いかけは、相手が自分の課題を具体化させ、明確い意識できると同時に、
前向きな行動意欲を引き出します。

コーチングとは、問いを通じて相手が自分で考え、決める力を育てること。
だからこそ、訊く力は単なる会話スキルではなく、人を育てる技術ともいえるのです

「聴く&訊く」力はスキルではなく、姿勢そのものである。

人材育成において、「聴く・訊く力」は単なるスキルではありません。
それは「相手を尊重しよう」という姿勢そのものです。

「聴くこと」は、相手への敬意であり。
「訊くこと」は、相手への関心なのです。
この2つが合わさった時、コミュニケーションは単なる情報伝達から、
『関係づくり』へと変わります。

CAN be CAREERでは、様々な研修の中で、この「きく力」を鍛えるプログラムを提供にしています。
聴き方のロールプレイや、質問の質を高める質問の仕方など、
一人ひとりの「きく力」を高め、組織全体の風通しを良くする仕掛けを取り入れています。

あなたの職場では、どんな「きく」が行われていますか?

会議、面談、日常の雑談。
耳で聞くだけのコミュニケーションが繰り広げられていませんか?

「きく力」を磨くことは、組織の関係性をより良くすること。
そして、「聴いて」「訊ける」職場は、信頼と成長が循環する職場であると断言できます。

CAN be CAREERは、広島の企業の皆さまとともに、
話せる組織であり、聴き合える組織づくりを支える伴走者であり続けます。

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