近年、生成AIの進化のスピードは著しく、
ビジネスにおいては既に業務の一部になっているところも多いのではないでしょうか。
目標設定、アイデア出し、文章作成。
これまで私たちが「脳みそに汗を書く」ことで生み出してきたアウトプットは、
生成AIを使えば、驚くほど短時間で、しかも一定以上の完成度で形になってしまいます。
便利になった。
効率は確実に上がった。
一方で、こんな違和感を覚えたことはないでしょうか。
「人は、この環境で本当に育つのだろうか」
生成AIの進化は、人材育成の前提そのものを静かに変えつつある。
と、個人的に感じています。
今回のコラムでは、そんな生成AIと人材育成について、考えたいと思います。
これまでの人材育成が、前提にしていたもの
従来の人材育成は
やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
と、有名な言葉があるように、
実際にやらせてみること、任せてみること、その経験を通じて育てるという思想が、
育成の根底にありました。
そして、この文脈は育成側の言葉ですが、
育成される側については、
調べる。
考える。
言語化する。
行動する。
といったプロセスが、
人を成長させるための重要な負荷として位置づけられてきました。
つまり、従来の人材育成は、
「考えること」と「やってみること」の反復運動によって、
人を育てようとしてきた営みだったと言えます。
しかし今や、生成AIの登場によって、
このうち 「調べる」「考える」「言語化する」の負荷の一部は、
一瞬で代替できるようになりました。
だからこそ今、
人材育成の焦点は
「何を考えさせるか」だけでなく、
「何をやらせ、何を任せ、その経験をどう意味づけるか」へと、
より強く移ってきているのではないでしょうか。
生成AI盛隆の時代に育てるべきもの
では、生成AI時代の人材育成は、どのような力を育てるべきなのでしょうか。
それは、
「早く正解にたどり着く力」や
「きれいな答えを出す力」ではありません。
重要になるのは、
実際に行動し、体験し、失敗と成功を繰り返す中で、
真に使える能力を身につけていく力です。
行動する。
試す。
失敗する。
修正してもう一度やってみる。
身につく。
結果を引き受け、覚悟を決める。
これらは、今も、これからも、変わらず「人にしかできないこと」です。
このサイクルを回すことで、
知識は単なる情報ではなく、
「自分の判断で使える力」へと変わっていきます。
そして、その積み重ねの先に、
組織にどのような形で貢献できるのかという視点が育ち、
結果として、
「自分は何を大切にして働くのか」という
価値観そのものが形成されていきます。
生成AI時代だからこそ、
この行動と内省のサイクルは、これまで以上に重要になっているのではないでしょうか。
「人材育成」の視点はどう変わるのか
ここで問われるのは、
生成AIを使うか、使わないか、という是非ではありません。
生成AIがある前提で、
この行動と体験のサイクルを、どう設計するか。
これが、人材育成に関わる側に求められる役割なのではないでしょうか。
・何をやらせるのか
・どこまで任せるのか
・どんな失敗を許容するのか
・その経験をどう振り返らせるのか
育成は、「教えること」や「正解を示すこと」から、
経験を通じて学ぶ環境を整えることに、より重心が置かれることになるでしょう。
生成AIが進化するこの時代の「人材育成」
「考えること」の一部をAIが代替えできるようになりましたが、
人が行動し、失敗し、学び、
その経験を通じて自分なりの価値観を形づくっていく。
これは、昔から変わらない人材育成の本質です。
しかし、生成AIが進化した今、
この当たり前の営みこそが、これまで以上に際立ってきている。
のではないかと、考えています。
便利な時代だからこそ、
あえて遠回りをすること。
経験を積むこと。
失敗をしたみじめな自分を引き受けること。
そこから学ぶこと。
生成AI時代の人材育成とは、
新しいものを足すことではなく、
変わらず大切にしてきた価値を、より意識的に支え続けることなのかもしれません。
これから求められる人材育成の形を一緒に考えませんか?
CAN be CAREERは、広島の企業の皆さまとともに、
これからの人材育成の形や組織づくりを支える伴走者であり続けます。