【第3回~どうやって動かすん?】「事業戦略ってウチにも必要かも…」と思い始めた人のための、事業戦略の基本のキ

前回までのコラムでは、以下のような「あるべき姿」と「課題」を明らかにしました。

■ あるべき姿:
誰が担当しても、提案の品質が安定し、お客さんに安心してもらえ、かつ安定して受注を挙げられるチーム

■ 課題:
成果につながる提案の型を定義・共有し、誰が担当しても一定の品質と成果が出せる体制をつくること

今回はこの課題に対して、施策を出し、選び抜いたあと、実際にどう動かしていくか。いよいよ戦略の実行フェーズに入っていきます。

■ 「やることが決まった」だけでは、戦略は進まない

施策が決まっても、フワ~っとしたまま何も動かず、時間だけが過ぎていく。
こうした「やることは決まったのに、何も進まん問題」は、実行フェーズでよく起きます。

では、「決まったこと」が、なぜ進まないのか?
それは、多くの場合、施策が行動の単位に落とし込まれていないか、あるいは管理の仕組みが用意されていないからです。

とくに中小企業の小さな営業チームでは、「なんとなく個人の経験と勘と度胸でやっつける」ことでなんとかなる場面も多く、逆にそれが仕組み化しないままの運用につながってしまうケースもあります。

■ 実行の基本は「プラン化」と「分担」

たとえば、施策として「ヒアリング項目の統一」があったとします。
それを動かすためには、次のように落とし込む必要があります。

▼ 実行プランの具体化ステップ

目的の確認:
なぜヒアリング項目を統一するのか?(提案品質の安定、成果の再現性)

やることの分解:

① 基本項目を抽出する
 └─ たとえば、4人の営業チームで「顧客の業種」「課題の背景」「予算感」「決裁者の情報」など、どの案件にも共通して必要な情報を洗い出します。

② 失注・受注事例を分析する
 └─ 過去の商談を振り返り、「どんな情報があれば良い提案につながったか」「何が抜けていたことで失注したか」などを比較して検討します。

③ ヒアリングシートをつくる
 └─ 抽出した基本項目をもとに、誰が使っても同じ視点で商談準備ができるようなシートを作成します。

④ 使い方を共有する
 └─ 営業チーム全員でシートの使い方を確認し、実際の商談でどう活かすかをロールプレイなどで共有します。

担当者と期限を明確にする:
誰が、いつまでに、どこまでやるか

ここで前回のHOWツリーが生きてきます。
HOWツリーでは「どうすれば?」の視点で施策が構造的に分解されているため、行動の粒度が揃っており、メンバー同士での認識のずれが生まれにくくなります。
また、こうした構造的な整理を通じて、施策をそのまま実行計画に落とし込みやすくなり、作業の抜けや重複も防ぎやすくなります。つまり、HOWツリーを使うことで、戦略を現場のアクションに落とし込む道筋が自然に描けるようになるのです。

■ 実行フェーズで機能させる3つの視点

施策を動かし、続けていくには以下の3つの視点が欠かせません。

① 実行の流れを設計する(ロードマップ)
 └─ やる順番・関係性・期日を整理する

② 活動を見える化する(モニタリング)
 └─ 「進んでる?」「使われてる?」を把握する

③ 振り返る場をつくる(習慣化)
 └─ 週次や月次でふり返り、改善に活かす

また、実行の精度を高めるには「やること」と同時に「なぜやるのか」をチームで共有しておくことも重要です。
目的の理解が浅いままだと、表面的な実行だけで終わってしまいがちです。

■ PDCAのPは「作業計画」ではなく「仕組み設計」

ここで戦略実行において重要なのが、PDCAサイクルのP=Planの意味を正しく捉えることです。
Planは単なる作業リストではなく、「どうやって仕組みとして回すか」の設計です。

たとえば:

① HOWツリーやブレストで出した施策を選ぶ
 └─ 複数案から最も効果的・実行しやすいものを見極める

② それを誰がやるか・いつやるかに落とし込む
 └─ 担当者・スケジュール・必要な支援などを具体化する

③ 実行結果を測定するためのKPIを設定する
 └─ 成果を可視化し、PDCAで改善につなげる

この一連のプロセスが設計されてこそ、PDCAのPが成立します。

次回は、こうして動かし始めた施策をどう検証・改善しながら継続させていくか?について解説します。
PDCAの「Do → Check → Action」側の設計や、KGI・KPIを活用した戦略の「見直し・進化」の視点に入っていきます。

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