「うちの会社は、どうも報連相がうまくいかんのんよ…」
そんな声を、管理職やリーダー層の方からよく耳にします。
報告・連絡・相談が滞り、気がつけば「もっと早く言ってくれれば…」という事態が繰り返されてしまう。
皆さんの職場でも心当たりはないでしょうか。
報連相には「報告」「連絡」「相談」がありますが、特に現場で悩みが多いのは「報告」と「相談」です。
今回のコラムでは、この二つに焦点をあてて考えてみたいと思いますので、「連絡」については簡単に触れておきたいと思います。
「連絡」は相手の状況を想像した気遣いと配慮がポイントになります。
例えば
・メールの件名は、内容を読まなくてもどんな内容なのかを判断しやすくする
・メールやチャットは「至急」「ご参考まで」などのタグをつけて、受け手が優先度を判断しやすくする
・会議前に抜け漏れ防止のリマインドを送るなど、相手の行動を支えるタイミングで伝える
・すべての人にCCで一撃で送るのではなく、必要な人だけに簡潔に伝える
といった小さな工夫が「連絡の質」を大きく左右します。過不足のないちょうどよい連絡は、組織の動きをスムーズにする潤滑油なのです。
「報告」と「相談」が滞る背景
「報告」や「相談」がスムーズにいかない原因のひとつが、心理的安全性の不足です。特に「悪い報告」や「失敗の相談」は、言い出すこと自体に勇気が要ります。
日常のちょっとした上司の態度も大きく影響します。
例えば、上司がPCに向かって難しい顔をしてばかりいたり、部下が話しかけても画面から目を離さず「そのまま話しんさい。聞いとるけ」と返すだけだったりすると、相談する側は「いま邪魔しているのかも」と感じ、言葉を飲み込んでしまいます。これでは元も子もありません。
また、過去に「失敗やミス」「悪い結果報告」をしたときに、こっぴどく怒られたりしたことがあるとしたら・・・
難しい顔をしていたり、『俺は今機嫌が悪いんじゃ!話しかけてくんなよ~』とピリピリモードの上司に、報告や相談なんてできるはずもありません。
一方、私が若手時代に出会ったある上司にこんな人がいました。
相談に行くと、必ずPCの手を止め、こちらに正対して「俺にとって君の相談以上に大事なものはない!さぁ、なんでも話してくれ!」と冗談まじりに言ってくれたのです。
時には、私から「報告が2点あります!しかも悪い報告2点です!」
上司『こわっ!よっしゃ!気合い入れて聞くわ!どんとこい!』なんてやり取りをしていました。
当時は「おもろいオッサンやなぁ~」としか思っていませんでしたが、振り返れば、私はその上司には事あるごとに報告・相談をしていましたし、当時の彼のチームはとても雰囲気がよく、業績もどんどん伸びていったと記憶しています。
冗談めかした言葉の裏に、「自分を大切に扱ってくれている」という安心感があったから、ノビノビと業務に打ち込むことができたのではないかと思っています。
こうした上司のちょっとした姿勢が、報告や相談のハードルを大きく下げるのです。
「言いやすくする」ための具体策とは何か
1. 報告・相談しやすい空気をつくる
よく上司から若手や新人に対して、報告・相談しやすい雰囲気つくりのために「どんな些細なことでも報告・相談してね!」と伝えることがあるかと思います。
ただ、この指示では、「これは報告に値するのだろうか」「こんな些細なことを相談をして迷惑ではないだろうか」と相手はかえって迷うことがあります。
そこで有効なのが、「報告や相談で、聞くかどうか迷ったら、いつでも聞いてOK」とルールを明確に伝えること。これなら判断基準が明らかになり、安心して声をかけやすくなります。
また、定例のチェックインや雑談ベースのミーティングを取り入れるのも有効です。あえて「報告・相談の場」を予定に組み込むことで、部下が気軽に話題を持ち込める土壌が整います。
2. 悪い報告こそ「早いほど褒める」
報告の価値は内容だけでなく、「早さ」にあります。
魚と情報は新鮮であればあるほど価値が高いと言われています(私の中だけで)。
たとえ悪いニュースであっても、早く報告が上がってくればそれだけ早く打ち手を考える時間が得られます。逆に遅ければ、取り返しがつかなくなる可能性が高まります。
ですから、部下が悪い報告を早めに持ってきたときこそ
「言いにくかったろうに、よく言ってくれた!助かったよ。ありがとう。」
と感謝を伝えることが重要です。問題そのものを責めるのではなく、報告してくれた行動を評価する。
さらに言えば、もしあなたの会社に評価制度があるとすれば、その中には『正直さ』や『誠実さ』という項目があるはずです。つまり、良くない報告を正直に、誠実に伝える行為は、そもそも評価されるべき行動なのです。この視点を上司が忘れずに持つことで、部下の報告する勇気は守られていきます。
3. 小さな相談を歓迎する
相談は困ったことになってからするものだと思っている若手も多いものです。
そこで管理職側から「聞くかどうか迷ったら小さなことでも聞いていい」「判断に迷ったら一緒に考えよう」と声をかけておきましょう。実際に相談があがってきたときには、「ありがとう」「いい判断だね」と受け止めることが肝心です。そうした一言が、相談のハードルを下げていきます。
まとめ
「報告」と「相談」は、部下に任せきりにしていては滞りがちです。実は上司の関わり方で大きく変わる仕組みです。部下に「言わせる」のではなく、いかに「言いやすくするか」。
その姿勢こそが、組織全体の「報告」と「相談」をスムーズに回すカギになります。
事業運営にとって「情報」は、体にとっての「血液」のようなものです。
血液が滞れば健康が損なわれるように、情報の流れが滞れば組織の力は発揮されません。上司の日ごろの振る舞いが、情報を流れやすくする血管の役割を果たすのです。
あなたの会社では、報告や相談を「言わせるスタイル」ですか?
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