「目の前の業務は回っとるけど、なんか成果が続かんし、上がっていかん…」
そんな違和感を抱えたまま、日々のタスクに追われていないでしょうか。
日々数字に追われ、納期に追われ、とにかく目の前のことをこなすだけで一日が終わる。
でもふと、
「今のこの業務は成果に繋がっているのかな」
「チーム全体として、うまく進めてるのかな」
そんなモヤモヤを感じたことはありませんか?
私自身もそうでした。
ですが、あるとき、出張で初めての土地を訪れた日にスマホを忘れてしまい、地図も土地勘もないまま目的地を探し回ったことがありました。遠回りして、余計な時間も体力も使って、ヘトヘトになった挙句目的地にたどり着いたとき、こう思ったんです。
方向がわからないまま動いて疲弊すること、仕事でも同じことが起きてるかもしれない・・・。
それが、「戦略って何だろう?」と考え始めるきっかけになりました。
■ 戦略って、特別なもの?
「戦略」と聞くと、経営者や幹部が考えるもの、自分には関係のない話。
そんなふうに思っていませんか?
でも実は、日々の業務の中で「何を優先するか」「どう動くか」を考えること自体が、すでに「戦略」の入り口なんです。限られた人・時間・予算の中で成果を出すには、小さなチームでも、大きな企業組織でも同じ『構造』での戦略の考え方が必要です。
▼ このコラムではこんなチームを例にてお話をします
- プレイングマネージャー:
売上も現場も抱え、毎日バタバタ。頭の中はいつもキャパぎりぎり - メンバー2人:
頑張ってるけど、やり方が属人的で手応えにムラあり。数年に1度、亜空間の受注をしてくるが続かない - 庶務1人:
見積書や調整業務で、現場を支える縁の下の力持ち
このコラムでは、こんな営業チームを例に、
戦略の考え方を考える順番として整理しながら、全4回で解説していきます。
- 第1回:現状分析と課題の見つけ方
- 第2回:施策の出し方と選び方
- 第3回:戦略を実行に移すには?(前編)
- 第4回:戦略を実行に移すには?(後編)
「ウチにも戦略が必要かも…」と思ったときに、少しでも参考になるような内容になればうれしいです。
■ ではここから、戦略とは何か?を整理してみます
「戦略」って聞くと、ちょっと構えてしまう言葉かもしれませんが、
ここではあくまで、日々の業務やチームの運営をどう進めるかという視点で、気楽に読んでみてください。
■ 限られたリソースを最大限活かす、考える順番
戦略を論理的に考えるには、次の4つの順番で整理していくとシンプルです。
- あるべき姿を描く(どこに向かいたいか)
- 現状を分析する(今どこにいるか/なぜそうなっているのか)
- ギャップを明らかにする(どれだけ差があるか)
- 課題を設定する(その差をどう埋めるか)
では、営業チームの例で見ていきましょう。
ステップ①:あるべき姿を描く
まずは「理想の状態」を以下のように考えます。
誰が担当しても、提案の品質が安定し、お客さんに安心してもらえ、かつ安定して受注を挙げられるチームになりたい。
こんな姿だとしましょう。
「目指す姿」が明確になると、「どこを変える必要があるのか?」も見えてきます。
ステップ②:現状を分析する
次に、今の状態を観察していきます。
ここで大事なのは、「目に見える現象」だけで終わらせず、「なぜそうなっているのか?」を掘り下げることです。
たとえば、
「営業メンバーによって提案の質にバラつきがある」
という現象に対し、WHYツリーを使って「なぜ?」を繰り返していくと・・・
なぜ、営業メンバーによって提案の質にバラつきがあるの?
→ 商談準備の内容や視点にばらつきがあるから
なぜ、商談準備の内容や視点にばらつきがあるの?
→ チームとしての準備手順や基準が整備されていないから
なぜ、チームとしての準備手順や基準が整備されていないの?
→ 属人的なやり方でもなんとか回っていたため、「整備する必要はない」と見なされていたから
なぜ、属人的なやり方でもなんとか回っていたため、「整備する必要はない」と見なされていたの?
☆真因☆
→ チームとして提案の“型”を定義する必要性が共有されず、標準化が後回しになっていた
※原因は1つではなく、枝分かれのように複数に分かれていきますが、今回は紙幅の関係でWHYツリーの詳細な構造説明は省きます。大切なのは、「表面的な現象」ではなく、「構造的な原因」に目を向けることです。また、実務では「3~5回」が現実的な深さの目安とされ、十分に納得できる原因にたどり着いた時点で打ち手を考えるのが効率的です。
ステップ③:ギャップを出す
ここでは、「あるべき姿」と「現状(+真因)」を比較し、ギャップを言語化します。
- あるべき姿:誰が担当しても、提案の質が安定していて、お客さんに安心してもらえるチーム
- 現状:提案内容や準備方法にバラつきがあり、共通の基準がない。結果として商談ごとの受注結果にもムラがある状態
- ギャップ:提案の「型」がなく、再現性が低いため、提案のクオリティも成果(受注)も安定しない
ステップ④:課題を設定する
次に、ギャップを埋めるために「何を変える必要があるのか?」を課題として整理します。
良い課題の特徴はこの3つです。
- 「誰のことか」がはっきりしている(営業チーム全体?マネージャー?)
- すぐ手をつけられるレベルに分解されている(大きすぎず、かつ現実的)
- やることではなく、変えたい状態になっている
( 例えば・・・)
▶× チェックリストを作る(=ToDo)
▶ 〇 チームで「成果につながる提案の型」を定義し共有。誰が担当しても一定の品質と成果が出せる体制をつくる
■ 最後に:「やってること」に意味や意図を持たせる
『チームで「成果につながる提案の型」を定義し共有。誰が担当しても一定の品質と成果が出せる体制をつくる』という課題がでてきました。
今回は、現状分析と課題の見つけ方について解説しました。長くなってしまったので、今回はこの辺で。
戦略って、なんだか難しそうに聞こえるかもしれません。
でも実はその正体はとてもシンプル。
限られた人・モノ・お金・時間を、どこに、どれだけ、どう配分するかを、筋道を立てて考えること。
つまり、「何を優先するか」を整理すること自体が、もう戦略の第一歩なんです。
やりたいこと、やれること、言われたこと、全部やろうとしてもうまくいきません。
だからこそ、どこに力を入れるかを考えることが、結果的にムダを減らし、成果につながります。
次回(第2回)は、見えてきた課題に対して、
「どんな打ち手があるか?」「どれを選ぶか?」を考えるステップへと進みます。