言葉のすれ違いが生む誤解
「2人まで5,000円です」
この一文、あなたならどう解釈しますか?
ある人は「2人で5,000円ってことか」と受け取り、
別の人は「1人5,000円で、2人だと10,000円ってことか」と解釈します。
どちらも文脈によっては成立してしまいます。
これは、まさに筆者である私と共同経営をしている者との間で起きた、今朝の事例です。
こうしたちょっとした解釈のズレが少しずつ蓄積していき、
深刻な問題につながる可能性も。
(私たちは「日本語ってむずいね~」で済みました。)
言葉は、思ったよりあいまいなもの
私たちはふだん、「言葉でちゃんと伝えた」つもりでいます。
けれど、実際にはその言葉が相手にどう伝わったか、確認することは案外少ないものです。
たとえば、最近ちょっとした話題になったこんな表現。
「8時10分前に集合でお願いします」
この一言を、
「8時の10分前=7時50分くらいじゃろ」と解釈する人もいれば、
「8時10分のちょっと前=8時8分くらいかな」と受け取る人もいます。
これを聞いて「そんなの前者に決まってるじゃん!」と思った方もいるかもしれませんが、それはあなたの中にある「暗黙のルール」や「日常的な感覚」、「これまでの経験」によるもの。
つまり、言葉の解釈には、その人の生活経験や文化的背景が大きく影響するのです。
一見わかりやすい言葉にも「余白」がある
こうした行き違いは、なにも時間の話に限ったことではありません。
職場で使われる何気ない言葉にも、意外なほどあいまいな表現が含まれています。
たとえば、こんなやりとりはどうでしょう。
- 「今日中に提出します」
→ 午前中?終業時間まで?それとも深夜23時59分までOK? - 「あとで電話します」
→あとで、とは 数分後?夕方?明日? - 「なるべく早くお願いします」
→ なるべく早く、とは今すぐ?今日中?来週中? - 「先方の都合に合わせます」
→ 日程?人数?内容?どの程度譲る?
言っている本人は明確なつもりでも、受け手の解釈によってまったく違う意味になってしまう。
そしてそれが、報連相のすれ違いや納期遅れ、気まずい空気の引き金になることもあるのです。
すれ違いを防ぐ、3つの工夫
こうした言葉のズレを防ぐには、ちょっとした工夫が大きな効果を生みます。
1.数値や時刻で具体的に伝えること
「なるべく早く」ではなく「今日の15時までに」、「あとで」ではなく「14時ごろに」など、明確な表現に言い換えることで、誤解の余地が減ります。
2.確認のひと手間を惜しまないこと
「つまりこういう意味で合っていますか?」と一言添えるだけで、ズレを事前に防ぐことができます。
3.聞き返しやすい空気をつくること
どんなに丁寧に伝えても、すべてのすれ違いを防ぐのは不可能です。
大切なのは、わからなかったら遠慮なく聞き返していいという関係性を築いておくことです。
「確認」のひと手間が、仕事の質を高めるが・・・
管理職や先輩社員の方からは
『若手が確認してこんから…』
『自分から質問してこんから、分かっとるもんだと…』
といった声をよく耳にします。
一方で、若手社員からはこんな声が返ってきます。
『忙しそうで声をかけにくいんですもん』
『こんなこと聞いていいんかなって、不安で聞けないっす』
『なんか怒られそうで怖いじゃないっすか』
これは、『確認しない』のではなく、『確認できない空気がある』というふうにも解釈できるかと思います。
このギャップを埋めるには、後輩側の主体性ももちろん大切なのですが、上司側・先輩側のふるまいがもっと重要です。
たとえば、部下が話しかけてきたときに、パソコン作業をしながら相手を見ることもなく
「オウ、聞いとるけ、そのまま話しんさい」などと返していないでしょうか。
きっと相手はこう思うでしょう「なんなん、この人、自分の話を聞く気ねぇじゃん。」と。
まずは手を止めて、相手と正対して話を聞く。
たったそれだけでも、「話しかけていいんだ」という空気はぐんと高まります。
また、ミスが起きたときにも、
「なんでそんなことしたんや!」と頭ごなしに叱るのではなく、報告してくれたことを承認する姿勢が求められます。
たとえば、「言いにくかったろうに、よう言ってくれたな。ありがとな!」と声をかける。
そのひと言で、部下は「この人には安心して話せる」と感じるようになります。
上司としてはつい原因追及に目が向きがちですが、
良くない情報が早く上がってくる状態こそ、管理職にとっては「望ましい姿」のはずです。
『すれ違い』を前提に。
「言葉のすれ違いは起きて当然」
「立場関係なく聞き返してもいい」
そうした前提を職場全体で共有することが、コミュニケーションの質を底上げします。
言葉のすれ違いは、どの職場にも起こりうるものです。
だからこそ、それを前提に、確認し合える土壌を育てることが何より重要です。
(ここからは「心理的安全性」について触れたいと思いますが、それはまた別のコラムで…)
「最近、ちょっとしたすれ違いが増えてきたな…」と感じている方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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