前回は、以下のような「あるべき姿」と「課題」を明らかにしました。
■ あるべき姿:
誰が担当しても、提案の品質が安定し、お客さんに安心してもらえ、かつ安定して受注を挙げられるチーム
■ 課題:
成果につながる提案の型”を定義・共有し、誰が担当しても一定の品質と成果が出せる体制をつくること
戦略の方向性が見えてきたら、次に必要なのは「具体的にどう動くか?」という打ち手の設計です。
けれども、いざ施策を考えようとすると、手が止まってしまうことも多いのではないでしょうか。
「やることが多くて、どっから手をつければええか分からん。」
「課題の内容が曖昧で、具体的に何を改善すればええのんか分からん。」
そんなときに役立つのが、アイデアを出す・整理するためのフレームです。
この回では、再現性のある成果につなげるために、どんな施策をどうやって出し、どうやって選ぶか、という「施策づくりの基本の考え方」を紹介します。
【発散フェーズ】施策の出し方
● ブレスト(ブレーンストーミング)
施策を考える際に最も手軽に取り入れられるフレームが、ブレスト(ブレーンストーミング)です。
ホワイトボードや模造紙、付箋を使って、「どうすれば、提案の型をつくれるか?」をテーマに、自由に意見を出し合います。
ブレストの基本ルール:
① 判断せず、数を出す(質より量)
② なんでも書く、アイデアをつなげる(飛躍も歓迎)
③ 否定しない、結論を出さない(自由な発想を守る)
ブレストの目的は「正解」ではなく、「可能性」を探る場です。どんな突飛なアイデアも歓迎しましょう!
たとえば「顧客の誕生日に合わせて提案書を送ってみる」とか「商談時に逆質問タイムをつくる」などといった、突飛なアイデアでもとりあえずは出してみることが大事です。
▼ ブレストで出たアイデアは、KJ法で整理する
アイデアがたくさん出た後は、KJ法を使って似た発想をグループ化し、施策の方向性を見つけていくと効果的です。
KJ法とは、発想や意見をカードや付箋などに書き出し、内容の類似性や関係性でグルーピングすることで、複雑な情報を整理・構造化するためのフレームワークです。
● HOWツリー
もうひとつの方法が、HOWツリーです。
「どうすれば?」を繰り返して、施策を論理的に構造化していくフレームです。
▼ HOWツリーの例(課題:提案の型を定義・共有するには?)
どうすれば、提案準備のプロセスを標準化できるか?
どうすれば、提案の型を定義・共有できるか?
├─ 提案準備のプロセスを標準化する
│ ├─ ヒアリング項目を統一する
│ ├─ 提案資料の構成テンプレートを作成する
│ └─ 商談準備のチェック項目を明文化する
どうすれば、ヒアリング項目を統一し、準備の観点を揃えられるか?
├─商談に必要な基本項目を洗い出す
├─過去の失注・受注事例から必要な情報の傾向を整理する
├─ヒアリングシートのフォーマットを作成し、チーム内で共有する
├─商談後、ヒアリングの網羅度をふりかえる場を設ける
どうすれば、商談に必要な基本項目を洗い出せるか?
├─受注・失注時の商談記録を複数ピックアップして分析する
├─商談の流れに沿って「聞き漏れ」が起きやすいポイントを洗い出す
├─営業メンバー全員で「これだけは聞くべき項目」をすり合わせるミーティングを行う
【収束フェーズ】施策の選び方
出てきた施策は、「やれそう × 効果が高そう」のマトリクスで評価します。
このときの効果の基準となるのが、KGI(Key Goal Indicator)=最終成果目標です。
▼ KGIの例:
現在20%前後の受注率を、25%以上で安定させる
施策を選ぶ際には、次の2つを基準にすると、判断がブレにくくなります。
・タテの軸/KGIに近づくか?(効果)
・ヨコの軸/すぐにやれそうか?(実行性)
4象限で整理すると、次のように優先順位がつけられます。
効果×実行性 | 実行しやすい | 実行しにくい |
---|---|---|
効果大 | 今すぐやる | 中長期検討 |
効果小 | 補助施策として残す | 今回は見送る |
最後に:出すことと、選ぶことを分けて考える
どんなに優れたアイデアも、「やってみよう」と決めなければ意味がありません。
ブレストもHOWツリーも、「整理して終わり」ではなく、「動き出すための準備」です。
言い換えれば、施策づくりは戦略を現場に届ける最初のステップ。考えたことをチームの動きに落とし込むことで、ようやく成果に近づき始めます。
次回は、いよいよ施策を実際に動かす段階へ。どう計画に落とし込み、現場に定着させていくのか?
仕組みとして回すための実行戦略について、わかりやすくご紹介していきます。「実際に動き出すための戦略」のつくり方を一緒に見ていきましょう!